[娘]おともだちだったのに


昨日、仕事から帰ってきた夫がニヤニヤしながら服のなかから出したのは、子猫だった。
拾ってきたというのだが、小さい。尋常ではない小ささ。ハムスターかと思った。
仕事で一緒の人が見つけて、死んでると思ってよく見たら生きていて、
猫用粉ミルクと哺乳瓶を買ってきて夫に押し付けたらしい。
猫の世話なんて初めてだしそれにしたって目も開いていないような生まれたて。
とりあえず栄養を与えなければ。糖水のほうがいいのかな?でもやっぱミルクかな?
ミルクの缶には体重130gミルク2gと書いてあったので
まずは体重を量ってみたら、75g……。
私があわわわとミルクやお湯を計量している傍らで、
娘が「ねこちゃんねこちゃん」と大喜び。夫も抱っこさせたりしている。
そんな子どものおもちゃじゃないんだからと、私はピリピリ。
たぶん生まれてから何ひとつ口にしていなかったと思う。
一生懸命ミルクを飲んでいるように見えたその姿に、これからこの子と一緒に暮らすのか、
なんて思いを馳せていた。娘もお手伝いしたくてたまらない様子。
息子は気にはなっているものの、ゲームやら作ってきた工作やらとそっちに夢中。
ミルク飲ませて、お尻をこちょこちょして(排便をうながすため。何も出なかったけど)、
背中をトントンたたいて(ゲップ出させるため。出なかったけど)、
小さなダンボール箱にカイロとタオルを入れたところに寝かせていた。
娘はずっとその傍らで「ねこちゃん、いいこいいこ〜」とか言いながらなでていた。
しかし、あまりの弱弱しさに目が離せない。台所仕事もそこそこに様子を見ると、
何やら苦しそう。っつか血が…。どうしようどうしようと抱えている間に……。


家に来てわずか2時間ほどだった。


あーあーあー私が悪い私が。と、ひどく落ち込んでお風呂場でシクシク泣いてしまった。
一緒に入っていた娘に説明するもよく分かっていない様子。
しかしお風呂から上がって、猫のなきがらをジッと見つめて、号泣し始めた。
「ねこちゃんだいすきだったのにー!!おともだちだったのにー!!バイバイやだー!!」
その様子を見て、私もまた泣いて。
夫と息子は先に寝室へ行き、私は娘抱えてふたりでシクシク。
娘はシクシクどころかずっと号泣。
ホメオパシーの「イグナシア」を与えてみた。私も飲んだ。
甘いものが口に入ったせいなのか、はたまたそれなりに効果を表したのか、
泣きやんで、寝室へ行き、いつものように絵本を読みきかせ、そのまま眠った。
今朝になって、猫の姿はなかったのだが(朝早く夫が何とかしてくれた)、
猫のことはひとことも言わなかった。
私も触れないようにしている。
しかし、ぬり絵をやらせたら、たまねぎピーマンや大根にトマト、
全部真っ黒に塗りつぶしていた。